競走馬デビューを目指す若馬たちサラブレッドセリレポート

「サラブレッドと馬主の方々が出会う場所」と聞いて、みなさんはどんなところを想像しますか?

緑が生い茂る牧場を想像する方もいらっしゃると思いますが、国内では毎年、サラブレッドのセリというものが行われています!
北は北海道から南は九州まで、様々な種類のセリがあることをご存知でしょうか?

セリには、優れたサラブレッドとの新たな出会いを求めてたくさんの馬主が訪れます。
私たちは先日、関東で行われたセリを取材しました。

数ヶ月後にはデビュー戦

今回取材したセリは、「トレーニングセール」と呼ばれる種類のセリです。競馬の世界では馬がレースに出走できるのは2歳からと定められていますが、このトレーニングセールに上場する馬たちは2歳。つまり、数ヶ月後にはレースに出走できる馬たちなんですね。体重も400kg、500kgを超え、かなりの迫力があります!

この馬たちはセリに来るまでに、「育成牧場」で競走馬になるためのトレーニングを積んできました。産まれてからの2年間、たくさんの人と関わり、色んなことを覚えながら立派な競走馬へと成長していくんですね。人間の2歳ならまだ、言葉を覚えて喋り出したぐらいでしょう。

ちなみにトレーニングセールは「騎乗供覧」の後にセリが実施されるという特徴があります。
「騎乗供覧」とは実際に馬場でサラブレッドを走らせて調教の成果をお披露目することです。

馬主の方々からすれば、実際に人を乗せて走っている姿を確認してから購入を決めることができるのは大きなメリットです。各馬の時計(走破タイム)も公表されるので、それを参考にする方もいらっしゃるでしょう。

いよいよセリ本番!

騎乗供覧が終わると、いよいよ競走馬デビューを目指す若馬たちが順番にセリにかけられます! 本番前でちょっと緊張しているようにも見える馬たち。(気のせいでしょうか?)

キラキラと澄んだつぶらな瞳がとても素敵です。(すでに現役で走っている競走馬と比べると若々しく、澄んだ表情をしているようにも感じます)
ちなみにセリなのでそのサラブレッドに一番高い値段をつけた人の手に渡ることになります。セリ参加者それぞれに様々な駆け引きがあり、馬主の方々全員が事前に目をつけておいた馬を必ず購入できるとは限らないんですね。良いサラブレッドを手に入れるためには、それだけ激しい競り合いが繰り広げられるわけです。

実際にセリが始まると司会者の景気の良い声が会場内に響き渡りました。

「700万! ありませんか? はい、750万円! 800万円!」

1万円、2万円というペースで上がっていくわけではなく、一気に数十万円、100万円単位で値段が上がっていく様子は圧巻の一言です!

また、少しでも多くの馬のアピールポイントを購買者に伝えようとする司会者のマイクパフォーマンスも素晴らしい。

「兄弟には、あの重賞レースを勝った◯◯がおります!」
「このセリのスウェプトオーヴァーボード(の子)にハズレなし!」
「ついにディープインパクトの子が登場です!」

などなど、きっぷのいいセリフが次々に飛び出します。最終的に5000万円を超える値段がつく馬たちの姿も見られ、大盛況のうちにセリは終わりました。

ここで見事に競り落とされて購入者(馬主)が決まった競走馬たちは、今度は調教師と呼ばれる専門家の元へと預けられ、いつしか競馬場で走るようになるんですね。何万人というファンの前で、皆の期待を一身に乗せて。

そしてなんと、このトレーニングセールで購入された若馬には、40日後に開催されたJRAで最初となる2歳競走の出走馬もいたそうです。まさに即戦力ですね

まとめ

とてもスケールの大きいサラブレッドのセリ。たった一頭の馬が非常に高価な値段で取引されることも珍しくありません。
それだけ生産者、育成者の手間暇や想いが込められている証拠なのです。

セリが終わったあと、とある関係者の方は「サラブレッドの『今まで』と『これから』が繋がる場所なんだ。単純にこの場の損得だけで、セリ会場に来ている人間は1人もいないよ」と笑顔で答えてくださいました。

脈々と受け継がれてきたサラブレッドの血統。競馬の歴史。

一頭の馬の誕生と成長までの過程。携わった生産育成者との絆。それは<セリに出るまでの物語>。
馬主との新しい絆。そこから紡がれるレースへの夢。それは<セリから生まれる物語>。

この2つのストーリーが交差し、沢山の馬と人の出逢いが生まれる場所。それがセリでした。

競馬は厳しいスポーツの世界でありながら、夢とロマンの世界なんですね。

一頭の馬を馬主と引き合わせること、無事に競走馬として育てること、レースで勝つということ、ファンの前で走るということ。

そのために多くの人間が馬と関わり、馬たちはたくさんの人の想いを乗せて走ります。そうやって競馬の世界は成り立っているんだなぁ、と改めて考えるきっかけになりました。単にビジネスとして儲かるとか儲からないとか、そういう話でもないんですね。テレビの前で競馬中継を眺めているだけでは、なかなか分からないことかも知れません。

近年、日本で生産された競走馬たちは世界の舞台でも目覚ましい活躍を見せています。競走馬の生産、育成は世界に誇れる仕事なんですね!

このセリで購入された馬たちにも、是非ともたくさん活躍して欲しいと思います。馬にとっても、人にとっても、素敵な出会いであったならば嬉しいです!

以上、サラブレッドセリレポートでした。